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第29話 消えたくないロウソク

last update publish date: 2026-08-13 16:22:57

古い石造りの教会がありました。

町から少し離れた丘の上に建つ、小さな教会です。

昼間は訪れる人も少なく、聞こえてくるのは風が木々の葉を揺らす音と、遠くから聞こえる鳥の声くらいでした。

けれど、夜になると、教会には静かな祈りの声が響きます。

祭壇の上には、何本ものロウソクが置かれていました。

その中に、一本だけ、少し変わったロウソクがありました。

白く細い身体には、小さな欠けた跡があります。

それでも、誰かに灯されるたび、そのロウソクは嬉しそうに炎を揺らしました。

「今日も、誰かを照らせる」

それが、ロウソクにとって何より嬉しいことでした。

けれど──。

灯されるたびに、自分の身体が少しずつ短くなっていくことも、ロウソクは知っていました。

炎が大きくなるほど、身体は小さくなります。

明かりを届けるほど、自分は消えていくのです。

ある夜。

人のいなくなった教会で、ロウソクは小さな声でつぶやきました。

「もっと、誰かを照らしたい」

少し間を置いて、続けます。

「もっと長く、ここにいたい」

その声を聞いていたのは、隣に置かれた古いランプでした。

何年もこの教会に置かれているランプです。

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    古い石造りの教会がありました。町から少し離れた丘の上に建つ、小さな教会です。昼間は訪れる人も少なく、聞こえてくるのは風が木々の葉を揺らす音と、遠くから聞こえる鳥の声くらいでした。けれど、夜になると、教会には静かな祈りの声が響きます。祭壇の上には、何本ものロウソクが置かれていました。その中に、一本だけ、少し変わったロウソクがありました。白く細い身体には、小さな欠けた跡があります。それでも、誰かに灯されるたび、そのロウソクは嬉しそうに炎を揺らしました。「今日も、誰かを照らせる」それが、ロウソクにとって何より嬉しいことでした。けれど──。灯されるたびに、自分の身体が少しずつ短くなっていくことも、ロウソクは知っていました。炎が大きくなるほど、身体は小さくなります。明かりを届けるほど、自分は消えていくのです。ある夜。人のいなくなった教会で、ロウソクは小さな声でつぶやきました。「もっと、誰かを照らしたい」少し間を置いて、続けます。「もっと長く、ここにいたい」その声を聞いていたのは、隣に置かれた古いランプでした。何年もこの教会に置かれているランプです。ランプは静かに言いました。「怖いのかい?」「……うん」ロウソクは素直に答えました。「灯されるのは嬉しい。でも、灯されるほど短くなる。役に立つほど、消えていく」「そうだね」「だったら……灯されないほうが、長くここにいられるんじゃないかな」ランプはしばらく黙っていました。やがて、古い身体をわずかに揺らしながら言いました。「光というものは、不思議なものだよ」「不思議?」「自分が消えたあとも、誰かの中に残ることがある」ロウソクは黙って聞いていました。「暗い道で見た小さな明かり。誰かに優しくされたときの安心。怖い夜に感じた温かさ。そういうものは、光が消えたあとも、その人の心に残っている」「……でも、私は消えてしまうよ」「そうだね」ランプは否定しませんでした。「だからこそ、今ここにいる時間をどう使うかが大切なのかもしれないね」ロウソクは、自分の炎をじっと見つめました。答えは、まだ見つかりませんでした。それから何日か経った、ある夜のことです。空は真っ黒な雲に覆われていました。やがて激しい雨が降り始め、風が教会の窓を激しく揺らしました。ゴォォ……。ゴォォ……

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